ビンテージのブレスレットはローズピンクのラインストーンが、小麦色の腕にも合う。
ロンドンの新型バスで隣り合わせたおばあさんは、コスチュームジュエリーをたくさんつけていた。動くビンテージってかんじ。
荒っぽい運転のバスに乗る階級だから、ジュエリーではないだろう。
油脂と糖質 (一)
待ち合わせ時間ぎりぎりに改札を出た私の目に、ジィは不機嫌そうに映った。くりくりした目をさらに見開いて‥とは明らかに違っていた。
門限のある私のほうに近い駅を指定したくせに、待ち受けていなかったからか。
夕立で私のバスが遅れたのもあるが実際、改札をくぐるのを引き伸ばしにした。
用意周到なジィのことだから、初めて降り立った街の散策を済ませているだろう‥いや、そうしていて欲しいと思っていた。女には分からない徘徊の楽しみもあるのではないか。
案の定、今夜の店とは反対側を見てきたらしい。
携帯サイトの飲食店から個室、デート、女子会の順で私が検索していくつかヒットしたページを、ジィが電話で当たってくれていた。