水色とコットンパール

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オックスフォードシャツとCARTINAの大粒コットンパールネックレス。



(羽根視線)
涼しいうちにあれこれ済ませようと欲張ると、倒れこむようにして布張りソファーでつらつら午睡し続ける。

笑顔で見おろす視線の先が、このひたいに定まっている。仮置きされた黒いふたつのボタンのようでもあり、テディベアの目玉にも思えた。

振り上げたうでの袖が自然にたくし上がると、あの視線は虫に成り代わって、みやす口の奥へと急降下したものだから、(これ以上は困るわ)と、戸惑い、目の端を吊り上げた。

北部では見ない黒紗の蝶か、あるいは神様トンボか。

薄ぼんやりした夢から跳ね起きれば、胸の谷間に汗が伝い落ちていた。


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微笑む視線は私のイヤリングで留まっている。
さらにスカーフで覆われた肩から無防備なデコルテへと落ちたので、慌てた。

(真っ直ぐな瞳で追い落とされた女は、これですべてを赦して来たんだろうか。ずっと前にもこういう視線を浴びた事があった。いつどこで、誰だったんだろう……)

女を上から下まで値踏みするような男ならば町内会にいたが、そういう噂はたちまち主婦の間を駆け巡る。

(私が人形になれば良いだけのこと)
今生の別れではないし、笑顔で前を見据えていた。

昔のボーイフレンドや婚約者はもっと、熱を孕む視線だった。娘時代は怯えながらも愛しいと思った。


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場面はカフェテリアに切り変わり、同級生の男の子と向き合っていた。
「もう嫌なの、あのひとと別れたい」
「わかった、伝えておくから安心して」

彼は私の恋人の旧友だ。幼稚な私は相手の辛辣な反論を恐れて、彼に泣き付く形をとった。

「買ってもらったこのイヤリングを返したくて。ビンテージの高いものなの」
「話の時に返しておくよ。次からは軽率な行動は控えて。簡単に受け取っちゃいけない」

彼はテーブルの上で両手を組み、穏やかな瞳で頷きながら、私の肩に視線を停めた。


(羽根視線)
(了)


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by kimawasanai_2 | 2016-07-16 22:05 | オシャレ小物

着まわせない主婦が組み立てる、ワードローブ