中学生のクラスは体育祭前に、風邪で順番にダウンしている。娘も夕べはリンゴとプラムしかのどを通らなかった。
私も明け方に熱が出て、つらつら夢とうつつをさまよった。小さな指で取り出されてご活躍………何で合コンなの?
ハワイアンプリントをカーキグリーンのポロに合わせて。ディオールの貝殻イヤリングがしっくりくる。
デンツ (七)
征三朗さんは4年後に医局へ入り、脳神経外科の助手として、ゆくゆくは講師を目指すことになりました。
一方で、文学部時代の卒後5年の同窓会通知が届き、興子らと再会しました。
「飛行機の時間があるから帰るよ」
「セイ、ゆっくりしてけ、明日は日曜だし」
「明日は昼から仕事だよ」
「私も、帰って少し横になります」
征三朗さんと興子はタクシーで駅に向かいます。妊婦の興子はまだ目立たぬお腹に手を乗せながら、隣に話しかけます。
「初診はお兄さまだったけど、恥ずかしいから他の先生に替えてもらったの」
「向こうは仕事だから平気だろうけど、もし何かあった場合、お互い困るね。兄貴、何か言ってた?」
「いいえ、診察だけだったから」
興子は反対方向の電車に乗り、初診の医師の言葉を思い出していました。
セイには困った…お袋が縁談を用意して待っていても……まあ、いい。親父が様子見に行ったら、バツイチ秘書と保育園のお迎え……抱え込まれたな。
(追記)
興子はいちどだけ、セイちゃんの大学病院に新幹線とバスを乗り継いで行ってみたのです。不妊外来への通院から解放されて、気が緩みかけた頃でした。
もちろん誰にも内緒ですから、通路を何往復かして帰りました。途中、大きなハート形ネックレスをした、白衣姿の女性とすれ違いました。医師がビッグオープンハートのメレダイヤを身につけて診察や回診とは考えられませんから、たぶんあの30代らしき女性がそうなのでしょう。
興子のハートネックレスと同じところの製品ですが、へき地にこういう女性もいるのだと感心しました。
興子はこれにて筆を置きます。
デンツ (了)