最近のキブン……花なら野に咲くマトリカリア、靴ならライトブラウンのワークブーツ。
UKで羊飼いのおじいさんが、ぬかるみで半世紀履き続けてるようなトリッカーズは堅いし、高いし。これは柔らかい革でサイドファスナーが楽チン。
服はアホパンク必須のエナメルだのビニール素材だのが失せて、ボコボコした編み地のニットやツィードばかり目で追っている。どんどんグランマ化してダサくなるもよう。
味覚のほうも水なし魚グリルで焼くメイプルハニートーストが美味くて、マイッタ。
去る16日はリカさま42回目の誕生日だった。(ちびで小太りの私をさらに肥大しダサくさせた)諸悪の根元バンドdummy-xDのワンマンライブは素晴らしい100分間だった。
ブルージー、カリビアン、ジャズの長いインプロビゼーションぽかったり。プログレという声も挙がった。
入場特典で未公開曲のダウンロード用パスワードが渡される。開演が押す中、人力ではなさそうなSEが素敵で飽きさせない。彼らは101Aもお好き。
160番台で2列目中央に収まった私は、アンクーの真ん前などと欲をかいて失敗、愛しのドラマーがアンクーに隠れて見えない……振り返ると満杯、オルタナパンクを愛する男女のファッションは目の保養だ。
鉢植えの萎れたポトスみたいなアンクーは、ギターストラップ掛けた壇蜜と化す。黒目がちな瞳にタレパンダメークがキモカワ。あの鎖骨に何を並べようか♪、と妄想する。
しょっぱなregionからにこやかな笑みを客席に撒き散らしている……わけではないらしい。ファニーな歌詞に合わせて笑ったり拗ねたり…こんなに表情豊かな人だとは思わなんだ、確信犯。へんてこで滑舌良いボーカルが吐き出す言葉に、嘘はないのだろう。
ギターのコマは目のふちを黒で囲み、ドライカットのマッシュルームボブが70年代のフォーキーな美形。硬い表情を崩さず演奏に集中しているが、時折リズム隊と向き合ってはニコッとする。
この八頭身シャビーなヒナギクに私は相当感化されて、アパートをコージー空間に変えるべく日々模索中だ(笑。
ベースギター憲人のところだけは、西海岸の風が吹く。つやつやした髪を揺らして、見る者にちゃんと肉を食べてる安心感を与える。今日はピカイチだった(そしてキャップのコレクションを見たいものだ)。
ドラムスのシンタローは熱帯のカトレア。精神的にもっとも大人かつ享楽的で、エネルギッシュに楽しそうに叩く。
ファンによくいわれるのは、彼のドラミングは打楽器ではなくてギターのごとく音を鳴らす。
後半はステージのボルテージがぐっと上がり、憲人とコマが客席に向かって元気いっぱいにプレイする。コマの新曲は広がりがあって良かった。
途中、アンクーがスタッフにスタンドを差し出し「線、交換して」と頼み、メンバーに「何て言うのか言い方がわからない」と照れ笑いする場面も。
アンコールは「昔の曲をやります」とアンクーがドラムセットの前にちょこんと座り、ステージところ狭しとぶっ壊れていった。
へんな生き物……異か。インパクト強くてカッコよくて、入手不可の音源はライブでしか聴けない。
最後に挨拶するシンタローの蕩けそうな笑顔に、会場の空気が揺れに揺れた。
帰りがけに、憲人とコマに「遠いけど向こうにもまた来てね」と挨拶。オフホワイトのミドルゲージニットに着替えたコマは猫みたい。
私は体力的に限界で、カッコいい彼らにはもう会えない気がする。