浴衣の下にレーヨンワンピースを仕込み、ギグがハネたら会場で脱ぐ。下駄はキケンなのでメリッサを持参。
夕べのハリポタタイム。開口一番、「明日も新幹線とJRが、遅延しない限り行きます。日帰り希望なので、大雨ならやめます。そちらの天気はどんなですか」と、若い女性の声で電話があった。
3ヶ月ぶりで一瞬、友だちの声だとわからなかった。
「お久しぶり、今から出待ちしちゃうの?」
「心細いからこうして話してます」
「サイレンスのギター、すごいイケメンで」
「ズルだよ。ムニは……シンタロウは?」
「あっ、さっき一瞬だけ。ふふふ今日の対バンは全部よかった〜〜」
「私を悔しがらせてるだけだね、明日来ないでいいよ。バンドマンの私服を片っ端から教えて。ダイとタクから」
「そこ揺らぎませんね……うわーメガネだらけ!大さんは変なの、面白い服、あっ雨対策なのか」
「変と面白い以外で」
彼女との会話の途中で、入れ替わり立ち代りバンドマンらしき男の声やハコスタ、ドリンクバーの会話も飛び込んでくる。
やがて友だちは開口一番のときと同じ台詞を、15分後にもペラペラとまくし立てた。
私は彼女が嬉しさのあまり気がふれたのかと思ったり、もしかして通話録音再生テープなのかと訝った。そして時間が巻き戻されたようにも感じたりした。
そこに高めなトーンの男の声が電波を舞うようにぬって入る。まるで黒電話時代の混線中みたいな妙な感覚に陥るので、ここは角が立たないように電話を切るべき。
「愛してるわ(20dB)……そろそろオバハンのお風呂タイムだから」
「そ、そんな大きな声…今のがアラセさんの声。明日も行きますって言っておきました」
「アラセ君て、誰?」
今朝は仲良く熱出した私たち。こめかみの頭痛が止まらない。
耳鼻咽喉科で「歯科治療が原因だね」と、ネブライザー後にいわれた90分後に会計をようやく終えて、浮き足気分。サンキュークリニック。